私は君を好きでいよう。


世界がもし今日で終わるとしても、

夜の時間は、たまに家に二人きりになる。

今日はプッチもディエゴも外に行ったまま帰ってこない日らしい。
大統領は仕事が忙しくてここが家だとは思えないほどしか姿を見ない。
人外どもは愉快な夜の散歩に出て行ったから、しばらくは帰ってこないだろう。
吉良の作った夜ご飯だけは律儀に食べていったが。

だから今は二人きり。
ぬくぬくとこたつに埋まって、皿洗いをする音を聞く。
テレビをつけるのは勿体ない。

「なあ、」
何となく、声をかけてしまった。
その先の言葉を用意していなくて、詰まる。
黙ってしまった俺を見て、吉良はどうかしたのかと問う。
声をかけたかっただけだと言っても、吉良は怒らないだろう。

「世界がもし今日で終わるとしたら、どうする?」
ただの思いつき。
また何となく、言葉を舌に乗せた。

「あと数時間しかないのか……」
吉良は時計をちらと睨みつけた。
「君を抱きしめて死ぬことにするよ」
事も無げに、さらりと言葉が返ってくる。

「死ぬ、のか?」
「ああ」
「意外だな」
「私が死なないように何かすると?」
無言でうなずくと、吉良はかすかに笑った。
「君のいなくなった世界では、平穏に生きられはしないよ」
はたと吉良は止まった。
「そう言えば、君はちゃんと死ねるのかい?」

「多分……?」
確かに、そう言えばの問題だ。
不用意に、何も考えずに口にした質問だっただけに、
そんなことまでは考えもしていなかった。
「スタンドの攻撃を仕掛けた側が死ねば無効になるんじゃあないのか?
 俺のスタンドじゃあないから詳しいことは分からないが……」
なりたくはなかったが長い付き合いだ。
概ねは能力について理解していると思う。
しかし何分自分の力じゃあないだけに、
未知のことがどれだけあるのかも知れていないのだ。

「それなら、さっきのは変更しよう。
 世界が終わっても生き残る。君が死ぬのを確認するまでは」

お皿を洗い終わった吉良がこたつに入る。
対面してではなく、隣の辺に。
指が、絡む。
くすぐったいと思う。
好きだ、愛していると、言われているみたいだ。

- continue -

2015-10-04

胸焼けしそうなほど甘ったるい話。

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