「世界がもし今日で終わるとしたら、どうする?」
ディアボロの質問は私を驚かせた。
ふとした時にいつも考えてしまうこと。
時間が長くなればなるほど、
始まりからの時が過ぎればすぎるほど、
終わりの時は近づいていると言えるのだから。
ここがいつ終わってしまうのかも分からない。
その時、終わった後があるのだとしたら、
終わった後など無く、世界ごと消えて無くなる方がいいのではないか。
人を好きになるということは、
その人と幸せになりたいということではなく、
その人と不幸になってもいいと思えることだ、と。
誰かの言葉らしい。
その人と一緒にいられるならば、それ以上のことは無い。
いや勿論こうして手に触れて、
話して、互いの顔を見て、
そんなことができればそれに越したことは無いが。
「今日は一緒に寝ようか」
指を絡ませた手が跳ねた。
「は? え……?」
疑うような目でこちらを見てくる。
そんな顔しなくたっていいじゃあないか。
「そういう意味じゃあない。期待しているならその期待に沿うがね。
今日世界が終わってもいいように、君を抱きしめて寝たい」
「あ、ああ、そうか」
顔を少し赤くしているのが分かる。
不健康なまでの白い肌は、ディアボロの感情を隠すのにはあまり役に立たない。
布団に入って後ろから抱きしめる。
首筋に顔をうずめれば、ぴくりとわずかに反応が返ってきた。
そこを舌で舐める。
「ぅあっ!?」
舐められた箇所を手で押さえて、
抱きしめられているから首だけで振り返ってくる。
「全く、色気のない声を上げるね」
電気を消していても月光が明るい。
どんな表情をしているのかは、すべて見えた。
「今日はこういうことをしないんじゃあ無かったのか」
「予定変更だ」
腕の拘束から解放して、ベッドに仰向けにする。
手を、手首をつかんで縫い付けた。
「おい、吉良!」
「抱きしめられて、反応したのは君じゃあないか」
こういうこと、期待していなかった訳じゃないだろうに。
耳を甘噛みしながら呟けば、赤く色づく。
「今日で世界が終わるぞ」
苦し紛れのようにディアボロが発した言葉が、鼓膜を揺らす。
「ディアボロ、君はどうするんだ?」
「俺もお前と同じだ」
そうか、それはよかった。
聞こえるか聞こえないか分からない言葉を呟きながら、
ディアボロの口を塞いだ。
- continue -
2015-10-04