明日のご飯は何がいいかな? なんて。


世界がもし今日で終わるとしても、

食べるだけ食べて、後片付けは何もしない。
手間だけかかって、もう慣れてしまったが腹立たしい。
嫌な慣れだ。
「ディアボロ」
呼ぶと何事かとディアボロが近づいてくる。
その手に泡を落としていない食器を持たせる。
「流してくれ」
文句を言うでもなく素直に手伝ってくれる。
こちらもこちらで慣れたのだろう。

食器を持って、水で流す。
手際が悪く、食器が音を立てる。
「水を無駄遣いするな」
口ではそう言いながら、手に魅入られる。
水に濡れる手も綺麗だ。

手を取って口づける。
「おい、ちょ、汚いぞ」
慌てて手を引くディアボロに、
自分がしたことに気が付かされる。
自分でしたことに驚いて見つめれば、ディアボロは静かに笑った。
その様も綺麗だなんて、思う。

手を引いてキスをした。
目が、見開かれる。
しかし舌の侵入は拒まれ、体が離れていく。
逃げる体を追えばその口を再び塞ぐ前にディアボロが言った。
「吉良、水が勿体ないだろ」
水道が流れ続けていた。

作業を再開する。
「昨日から何かおかしくないか?」
いぶかしんだ表情でこちらを伺ってくる。
「そうかな?」

今日世界が終わらなかったことが、こんなにも幸せだとは。
昨日から、不思議な気分がしている。

しかしもし今日に世界が終わるとしても。
今日は特別な一日ではなく、
「明日のご飯は何が食べたい?」
「……ハンバーグ」
「そうか。考えておこう」
明日がまたある普通の一日として過ごそうか。

- end -

2015-10-10

甘い話第四弾。甘すぎる吉良さん。EoHへのボスの参戦はいつ決まりますか……?

web拍手 by FC2


inserted by FC2 system